きたかぜとたいよう✱kodomo to ouchi✱

むずかしいお年頃の娘といつまでも幼い5つ下の息子。そして夫と私と小鳥との日々!

精巣がん。術後の3択。②

 
 主治医に、予防的に放射線治療を受けるよう勧められ、私たちは翌週放射線科を訪れました。

手術や入院の時はあまり感じなかったのですが、放射線科は病院の地下の鉄の扉を抜けた少し奥まったフロアにあり、改めて夫の病気について重い気持ちになったのでした。


人が溢れていた1階の外来とは違い、がらんとひと気がなく、受付を済ませて座っているとまた別の鉄の扉から看護師さんが問診に来てくれました。
問診の聞く姿勢も慌ただしい1階とは違って、隣に座り落ち着いて話を聞いて下さり、夫のちょっとした不安にも親身になって応えて下さる感じがまた特別な病気に感じて、有難いけど不安でした。


診察室に呼ばれて入ると、中で待っていたのは私たちとそう歳も変わらない感じの穏やかな女性医師でした。
そして、まずはとても丁寧に夫の病理検査の診断結果を改めて説明して下さいました。
多分、本当は主治医から伝えてもらうべき内容なんだろうなぁと思いながら…。

そして、主治医が示した3つの選択肢について一つずつ丁寧にわかりやすく教えて下さったのですが、感動したのは、私たちに説明するために事前にいろいろ下調べをしてまとめられた手書きの用紙が数枚机にあったのです。
私たちときちんと向き合って診察に臨んでくれる姿勢がうれしくて、放射線科の鉄の扉を入った時の不安は一気に消え去りました。


ステージにもよりますが、ステージⅠの夫が持つ選択肢は3つ。
①経過観察
精巣がんのステージⅠのセミノーマは、再発率が15%ほどで、何もせずに定期的に再発や転移がないか検査を受けるだけ、というのも今は主流だそう。
受けなくてもいい人の予防的治療による副作用を防ぐため。

放射線治療
セミノーマは放射線によく反応して治療成績がいいので、手術で摘出後、精巣と繋がるリンパ管に放射線を当てることで、15%の再発率を5%に下げることができる。
予防的照射のため線量は通常より少なく済む。

抗がん剤治療
比較的副作用の少ない新しい抗がん剤を一度だけ点滴で入れることで、②と同じ15%から5%に、再発率を下げる。
当てた部位だけに効果がある放射線と違い、全身に有効なので万が一すでに離れた場所へ転移があったとした場合それを防ぐことができる。


放射線治療をするつもりで受診した私たちでしたが、ここまでの説明を聞いて、あれ?抗がん剤の方がよくない?と私は感じました。

そして、「治療を選択するしかない患者さんには詳しくは伝えない事ですが」、と前置きして、
治療後何年か経ってから、放射線治療には被爆による二次がんを新たに発症するというリスクが10%、抗がん剤には白血病を発症するリスクが考えられるということも付け加えて説明されました。


そこで私の気持ちは、経過観察でもいいってことかな…。とまた変動。



私の頭は混乱しました。


放射線を受けるものだと思って、放射線については勉強していましたが、抗がん剤なんてまったく頭になかったし、予防できるなら何かしておいた方が安心だと、経過観察も考えていませんでした。

でもここへ来て、どれを選んでも低い確率でリスクはあり、何が正解なのかは誰にもわからないのです。先生にも。

ただ、先生の所見では、夫の腫瘍は少し大きく、脈管侵襲という脈やリンパの中にもがん細胞が及んでいるという結果から、ステージⅠでも何かしておいた方安心かもしれないとのことでした。
あと、なんとなくこの先生は放射線より抗がん剤を推されているような感じが私はしました。


私も夫もすぐに答えを出すことはできず戸惑っていると、一度腫瘍内科へ行って、抗がん剤治療についても詳しい話を聞かれてはどうですか?と勧めて下さり、そうお願いすることにしました。


泌尿器科では、こんな詳しい説明は何もないままでただ放射線治療すればいいと、軽い気持ちで来ましたが、放射線科の先生が、私たちに迷う時間を与えて下さったこと、今も本当に感謝しています!