高位精巣摘除術。
夫が受ける手術は、高位精巣摘除術というものでした。
しこりができて腫れている方の精巣を、精巣と繋がるリンパごと採るので、切開する位置は睾丸ではなく脚の付け根の少し上、お腹の左下の辺りで、そこから精巣を引っ張り出すイメージです。
手術自体はそれほど難しいものではなく、1時間程度で終わるとのことでした。
麻酔は最初の診察の時、おそらく全身麻酔との説明でしたが、下半身だけの腰椎麻酔になる可能性もあるとのことでした。
本人は知らない間に終わっていてほしいから全身がいいと言っていて、私もそう思いましたが、やはり麻酔が身体に及ぼす影響はあまりよいものではないらしく、安全面からできるだけ少なく済む方法を選ぶものだそうです。
そして、夫の手術は下肢だけでもできるとの判断で腰椎麻酔ですることになりました。
まじか〜…と夫はつぶやいていました。
痛くなくても意識がある時にお腹を切られて精巣を引っ張り出されるの、嫌ですよね…。
かわいそうと思いましたが身体に負担の少ない方を選んで下さったのだから、と励ましました。
夫を見送って部屋にぽつんと1人残され不安でしたが、難しい手術ではないとネットでも見ていたので、1人が不安なだけで手術に対する不安はありませんでした。
今頃丸まって痛い腰椎麻酔打たれているのかな…。
今頃手術台に上がったかな…。
そんなことを考えながら、一応持って来ていた本を読んで病室で待ちました。
内容は少しも頭に入ってきませんでしたが、何もなく待つよりはいくらかましでした。
本当にちょうど1時間経つ頃、看護師さんが部屋に来て、「手術室からから終わったと連絡があったのでお迎えに行ってきますね」と声を掛けてくれました。
それまで割と落ち着いて待っていられたのですが、そこから急にソワソワして、何度も部屋を出てエレベーターの方を見たり、また部屋に入ったり、うろうろしていました。
そしてベッドごと帰ってきた夫。
言葉少ない先生は特に何も仰っしゃられず、私もただ、ありがとうございましたとお礼を何度も言うしかできませんでした。
こんな時、誰か冷静に付き添ってくれる人が居たり、私の代わりにソワソワしてその分私を冷静にさせてくれる人が居たら、聞くべきことやお礼も落ち着いてきちんと言えたのかもしれませんが、無事に帰って来てくれたことと、1人で待つことの不安から開放された安堵感で胸がいっぱいになって、ありがとうございましたしか出ませんでした…。
この手術を受けた後、頭痛が起きることがあるそうで、それは心配のないものだということを夫に伝えると、先生は行ってしまいました。
夫は、顔色はあまり良くありませんでしたが、大丈夫?と聞くとうんうんと頷いてくれました。
とにかく、悪いモノはとってもらえた。
とった腫瘍をこれから病理検査に出して、悪性なのかどうかを調べ(90%悪性とのことなので悪性だと思っていましたが)、またその性質によって今後が変わります。
転移の有無も検査しなくてはなりません。
まだまだ不安はなくなりませんが、とりあえず大元の悪い所は身体からなくなった…
ここ2、3日急な出来事でバタバタしてぐっすり眠れませんでしたが、今日は眠れそう。
夫も眠れるといいな…と思いながら、夕食後夫を残して子どもたちの待つ実家へと帰りました。